都会の薪ストーブと里山の薪(まき)をつなぐ

失敗しない薪ストーブの選び方

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失敗しない薪ストーブの選び方

これからお話しすることは以下のいづれかに当てはまる方に向けています。

冬場の主暖房とする方

 (たまに火遊びするだけ、という人には当てはまりません)

ずっと長く使い続けたい方

 (とりあえず買ってみて、嫌になれば捨てればいいや、という人には当てはまりません)

ご家族で最低1人は、薪ストーブに興味を持っている

 (逆にいえば、誰か1人いれば長続きします)


です。要は、薪ストーブを実用として長く使いたい方向けのお話しです。(これに当てはまらない場合は以下を読む必要はありません)


薪ストーブを選ぶ基準は以下の3つです。

1.薪の長さ40センチが入ること(50センチの薪が入ればなお良し)

2.使用環境(小さいお子さんがいるか、料理するか、など)

3.デザイン(感情として気に入らないと火を焚かなくなる、メンテしなくなる)

イマイチわかりにくいですね。

細かく説明します。

1.薪の長さ40センチ以上が入ること!

 薪の長さ40センチ以上の薪が入らないと、ズバリ、ものすごく不便です。

 私の家でも昔、30cmちょっとしか入らない薪ストーブを使っていたことがあります。ちっとも暖かくなくて、非常に不便でした。今は40センチ以上の薪を使いっていますが、もう後には戻れません。

 40cm以上をお勧めする理由は3つあります。

 1つは、短い薪しか入らない薪ストーブでは、発熱量が足りません。

 例えば、長さ40cmと長さ30cmの薪を較べると、40:30ですから、3/4(よんぶんのさん)で75%か、と思うかもしれません。

 しかし、正しくはそうではありません。

 薪ストーブの燃焼室---炉内(ろない)とも言います---は四角い箱場になっていますので、【たて×横×奥行き】という容積の比率を計算すると、

 【40×40×40】:【30×30×30】 となりますから、42%の差となります。

 つまり、30cmしか入らない薪ストーブは、40cmが入る薪ストーブの42%、なんと半分以下のスペースだということです。

 関東や西日本のような比較的温暖な地域では、このような薪ストーブでも確かに暖かいとは思いますし、実際として、その他の暖房器具(灯油ストーブ、電気ストーブ等)に較べればそれでも充分暖かいです。

 しかし、雪深い越後で、家一軒丸ごと暖めるには、40cm以上の薪が入る薪ストーブでないと務まりません。

 二つに、30cmの薪は、積み上げたときにグラグラします。不安定なのです。私も経験しているからハッキリ申し上げるのですが、30cmの薪を積み上げると、腰の高さ(1メートル程度)でグラグラします。それ以上は不安定なので積み上げられません。40cmの薪ならばそのようなことはなく、胸の高さ(1.4メートル位)迄安定して積み上がります。なるべく高く積み上げられた方が、薪の収納スペースが少なくて済むために、メリットがあります。

 なお、30cmの薪を安定させて高く積み上げるには、薪を2列、3列に積み上げる方法もあります。乾燥しきった薪ならば3列に積み上げても良いのですが、未乾燥の薪を積み上げる場合は、3列にすると、真ん中の薪の乾きが遅くなります。

 三つには、30cmの薪と40cmの薪とでは、薪作りの手間がものすごく違ってくる、ということです。30cmの薪を作るのは、単純な計算として、3割増しの手間(時間)が掛かります。しかし、実際にやってみるとわかりますが、気持ちとしては3割増しどころではなく、2倍近い手間のように感じます(人間の心理というのは面白いものです)。

 以上3つが、30cmの薪ではなく、40cm以上の薪をお勧めする理由です。

 

 しかし、現実に40センチ未満の薪しか入らない薪ストーブが売られています。最近ではモルソーの新型にこのテがあります。

 ヨーロッパではいま、趣味性の高い新製品がどんどん発表されています。

 例えば、正面ガラスが3次元曲面で、スプリングを使ってスーッと上にハネ上がるタイプもあります。ものすごくオシャレ。私も欲しくなりました。

 とはいえ、入る薪は25センチ位。30センチがやっと。このような薪ストーブは、雪国ではおよそ実用とは言えません。

 このような薪ストーブが本場の北欧で売られている理由はハッキリしないんですが、私見では、セントラルヒーティング(大型ボイラ)が完備されて、薪ストーブはもはや実用品では無くなっている、そんな家庭向けに「遊び心」を刺激する薪ストーブが売られていると見ています。

 あるいは、2台目、3台目の薪ストーブとしてなのかもしれません。とにかく、彼の地ではそのような小さな薪ストーブを決して「主暖房」としては使ってはいないはずです。発熱量が足りませんから。

 このような短い薪しか入らない薪ストーブを雪国で主暖房に買うのは勘違いもいいところで、買うと後悔します。


2.使用環境


 たとえばお子ちゃまが走り回っているなら薪ストーブ本体が熱くならないものが良いでしょうし、料理をしたりヤカンのお湯を沸かすのなら熱くなるものの方がいいです。

 薪ストーブ本体の表面が熱くなるのが「輻射式」(ふくしゃしき)、熱くならないのが「対流式」(たいりゅうしき)です。

 ちなみに、新潟県内で売られているものの多くが「輻射式」で、我が家で使っているのが「対流式」です。(自宅のは、アンデルセン ローゼンボーグ3。 いまは生産終了しました 涙)

 「対流式」は、火を焚いていてもストーブ周囲を素手で触れます。でも正面のガラス扉は熱いです。

 ただ、子供さんがいても対流式のストーブをお使いの家庭は多いです。
(子供が触れないように囲いをする方もいらっしゃいますが、珍しいです。)

 あるご婦人は、
「子供が小さいときに薪ストーブに手を近づけて、熱いよ危ないよーと言っておけば近づかないですよ」とおっしゃっていました。

 むしろ、対流式は薪ストーブの上にヤカンを載せても沸騰しないんで、
不便このうえ無いです。コトコト煮込む料理もできません。

 我が家の薪ストーブにはパンを焼くオーブンがオプションで付けられるのですが、パンよりもご飯の家なんで買っていません。

 ちなみにこの薪ストーブは、父親が勝手に選んで注文したので、寝耳に水でした。結果的にはまあ悪くはありませんが、買う前にひとこと言ってくれれば輻射式にしたと思います。

 そんなわけで、結論としては輻射式をお勧めします。


3.デザイン


 スパルタンな直線的デザインが良いか、曲線のふんわりしたものが良いかは、買う人の趣味によってお決め下さい。

 こればかりは、どちらが良いとかは言えません。お一人お一人の感性の問題です。どうぞ気に入ったものをお選びください。

 毎日目にする家具の一つなので、気に入ったものでないと長続きしません。値段もそれなりに高いので、よくよくお選びください。(選んでいる時間も、楽しみの一つです)

 また、薪ストーブは手入れ(メンテナンス)が必要なので、気に入ったものでないと手入れがおろそかになります。

 インターネットで情報収集した後に、是非薪ストーブ屋さんのショールームに行って必ず現物をお確かめになることをお勧めします。

以上が選び方の基準です。

よく言われる、

・ストーブのサイズは部屋の大きさに合わせて

は、気にしなくて結構です。


ストーブのサイズと部屋の大きさのバランスを気にしなくて良い理由は2つありまして、

 ×カタログ記載のカロリー表示は全く当てにならない。

 ×小さい薪ストーブは短い薪しか入らないので、部屋だから小さいストーブでいいや、と思うと大失敗する。

です。

で、薪ストーブの具体的な候補ですが、


●バーモントキャスティング アンコール等

●ダッチウエスト ラージコンベクションヒーター
 (エクストララージはものすごく薪を食うのでお勧めしません)

●ヨツール F400、F500 (F600は大きいので、あまりお勧めしません)

●ネスターマーティン S43


とかになります。このサイズのものをお選びいただくと、まずハズレないかな、と思います。


薪ストーブの具体的な機種名を書かせていただきましたが、当店はこれら薪ストーブおよび薪ストーブ販売店さんとの利害関係は一切ありません。当店が個別の薪ストーブをお勧めしても、当店は1円の得にもなりません。


以上、概略ご説明しました。



以下に、もうちょっと詳しい情報を書きますので、
ご興味のある方にはご参考まで。

触媒(キャタリスト)はあった方がいいのか、ない方がいいのか?

触媒(キャタリスト)というのは、細かいハニカム構造の穴のあいたもので、薪をできるかぎり完全燃焼させるためのものです。(クルマのマフラーと同じ)

※カタログでは「キャタリティック」と表現されています。

触媒があると確かに燃費は良いです。

ただし、触媒には寿命がありまして、3〜5年毎に交換が必要です。
(1個2〜3万円)。


  • 薪を買う人は、薪代が浮くのであった方がトータルで安くつく。
  • 薪を自分で用意出来る人は、触媒代が勿体ないのでない方がよい。


これが、薪ストーブ利用者と薪ストーブ販売店の共通の見解です。

なお、触媒のないタイプの最新式は「クリーンバーン」と表現されているものもあります。触媒を使わずに2次燃焼あるいは3次燃焼して効率を高めています。

(ただし、それでも触媒があった方が燃費は良いです)


煙突はどんなのが良いか?


できれば2重煙突、または3重煙突をお勧めします。

(とはいえ、我が家は1重煙突です)

1重と2重の直接的な違いは、煙突の掃除の手間が掛からないということです。

とはいえ、うちの煙突は1重でも「たて」の部分はススはたまりません。
ほとんど横の部分にススがたまります。これについては以下に述べます。


煙突はまっすぐがいいのか、横に出すのがいいのか?

昔の人は、長さの比率が

「たてに7割、横に3割が一番良い」

と言っていたものです。

 これには、それなりの理由がありました。

 煙は煙突を暖めます。暖かくなっている煙突を室内に延ばすことによって、できる限り室内を暖めようというわけです。

 昔の我が家でもそうでしたが、横に煙突を延ばせば、当然ながらススがたまりやすくなります。ススがたまっても、部屋を暖めようとしていたわけです。そして、月に1回は煙突掃除をしていました。

 ですが、ここで取り上げているような高性能のストーブには当てはまりません。

今のストーブは、

 「たてに100%」がベストな煙突です。

 現在の高性能薪ストーブは、薪ストーブ内で最大限の熱効率を出すために、かなり良く考えられています。カタログには、「2次燃焼」とか「3次燃焼」とか書かれていますが、薪の燃える炎に流れを作り、空気を加えと、とにかく完全燃焼させようと躍起になっています。

 そういう作りになっています。繰り返しますが、煙突は「たてに100%」がベストな煙突です。

 ところで、たてに100%の煙突にしようとすると、
   ・1階の天井をぶち抜き、
   ・2階の床を貫通させて、
   ・2階の天井をぶち抜き、
   ・屋根に穴をあけて煙突を出す

のが一番良いことになります。

 とはいえ、個人的にはやりたくないです。

理由は、屋根の防水加工が難しいから。

 今現在の最新の煙突工事はどうやっているんだろうと調べてみたんですが、

  1.なるべく「尾根」に近い屋根に穴をあけ、(雨水が少ないから)
  2.屋根の勾配を煙突周りで持ち上げて雨水の侵入を防ぎ、
  3.周りをコーキング処理する。

というものです。

 コーキングは10年くらいしか持たないと思った方がいい。
家で10年というのはあっという間なんで、そこから水が入って。。。。
と考えると私としてはうんざりします。

 そんなわけで、薪ストーブの最大効率を犠牲にしても、
壁に穴をあけて横に煙突を出した方が無難という考え方もあります。

 でも現実としは、屋根に穴をあけている家が多いです。
工務店が永久保証してくださるんなら、私も頼みたいものです。

 なお、たて100%だと、煙突掃除は本当にラクです。
2重煙突でたて100%なら煙突掃除は基本的に必要ないと言っても良い。

 我が家の煙突でいうと、たて80%、横20%ですが、ススがたまるのはほとんどが横。たての部分は本当に溜まりません。

 ちなみに、2重煙突でたて100%のご家庭で、3年くらい煙突掃除をしたことがない、という方もいらっしゃいます。

ですが、やっぱり1年に1度はブラシを通した方が良いです。

 煙突の建て付けとか、腐食、傷を診るのは大事だと思います。

 また、煙突の出口から鳥が入ってストーブの中でパタパタやっていた、というお話しを聞いたことがあります。鳥が入るということは、中に巣を作っている可能性もあるということです。

 煙突が詰まったまま火を焚くと、煙が家の中に充満します。ゲホゲホ。

部屋じゅう煙で燻されます。ご家族からの顰蹙は、それはもう強いものになります。

ご家庭内の平穏と良好な人間関係を重視されることを、強くお勧め致します。


薪ストーブの色は?

いろんな色がありますが、熱効率の良いのは、ズバリ、

  ・黒(ブラック)で、
  ・表面に光沢が無くて(ツヤツヤしていない)
  ・凸凹している

のが最大効率を発揮します。

よく勘違いされるんですが、薪ストーブというのは、「焚き火」とは全く違います。

裸火を囲って煙りを外に出しているだけ、と思うと大きな勘違いをする。

薪ストーブというのは、

『木が燃えることにより発生する熱を用いて、
耐熱ブロックや鉄等を暖めることによって
空気を暖めたり電磁波を発生させる装置』

です。

つまりこういうことです。

 裸火に当たると、顔がヒリヒリしますよね?

 これは暖房に関係ない電磁波も発生しているから。顔がヒリヒリするのは例えば紫外線ですが、紫外線は、暖房効果には全く関係ありません。

 薪ストーブは、この紫外線を覆って、暖房に効果のある遠赤外線の波長の
比率を高めます。(物質の温度を上げていくと、電磁波が発生します。どんな電磁波が発生するかは、その物質により決まっています。薪ストーブとしては、人間が暖まる周波数であることが望ましいわけです。具体的には、「遠赤外線」と呼ばれる電磁波です。

 繰り返しますが、人間が暖まる電磁波の周波数というのは、「遠赤外線」(えんせきがいせん)です。

 遠赤外線は目に見えません。

 見えませんが、体が芯から温まる感じがする、そんな電磁波です。(実際には体の芯までは到達していませんが、皮膚を通して暖かく感じられます)

 そして、遠赤外線がたくさん発生するのは、鋳鉄で黒。

 薪ストーブのショールームに行って、実際にあたってみるとわかるんですが、黒い薪ストーブとカラフルな薪ストーブを較べると、カラフルな方が顔がヒリヒリします。これを勘違いして、「暖かい」と思う人もいるんですが、これは単に紫外線等で日焼けしているだけです。

 最後に、表面が凸凹だと表面積が見かけよりもはるかに広くなる。
空気に触れる面積が大きいんで、熱効率が良い。

ただし、カタログ記載の「カロリー」には上記は全く反映されていません。
(だから、あの数字で選ぶのはまったく意味がない)


ちなみに、このような「カタログ表示のワナ」は、薪ストーブに限ったことではありません。

 例えば、当店で使っている薪割機もそうです。

 薪割機の能力を示す表示として、「○○トン」という表示があります。薪を割るクサビが押す力のことです。

 この表示は、アメリカ製とヨーロッパ製では測定基準が異なりますので単純に数値を比較しても全く意味がありません。

 1台の薪割機を、アメリカとヨーロッパの基準で測定すると、ヨーロッパの基準の方が小さい数値で表示されます。だから薪割機を選ぶときは、エンジン(モーター)の大きさや価格で推測して、口コミ(くちこみ)を調べて決めるしかありません。


薪ストーブはどこで買うか?

 さて、薪ストーブはどうやって入手したら良いのでしょうか。

選択肢としては、以下の3つがあります。

・正規代理店で買う
・並行輸入を買う
・個人輸入する

です。

 正規代理店は、メンテナンスをしっかりやってくれます。保証も付きます。

 並行輸入は価格自体は安いですが、外国製の薪ストーブはそもそも、加工・組立精度が良くありませんので、使う前に自分で一度分解して組み立て直した方が無難です。

 個人輸入は、現地価格が安いものの、なんせ重いんで(200キロくらい)、輸送コストがかかりすぎです。実際に現地で買って日本に持ってきた人の話しでは、送料を含めたら正規代理店の価格よりもちょっと高くなったそうです。輸入コンテナに便乗させてもらえるツテがあれば良いかもしれません。(これも、使う前に自分で組み立て直すべきです)

 外国製の薪ストーブは、国内入荷時の品質は本当に悪いんで、日本の感覚ではまず「不良品」と言われています。部品が欠品のときもある。そんなわけで、正規代理店モノは、日本国内に入ったら一度分解して組み立て直しています。

 ただ、構造は簡単なんで、時間があれば自分で組み立てることもできなくはありません。バリ取りをして、耐熱シーラーをキチンとやり直して、建て付けを良くすれば良いわけです。

 ちなみに、私が使用している外国製の薪割機もやっぱり国内入荷時の品質が悪いため、輸入総代理店が国内で組み立て直しているとのことです。

 個人的には、輸入コストを含めた内外価格差はそれ程ないので、正規輸入品を購入して、保証がしっかり付いたものを購入するのが、後々安心して使えると思っています。

 そんなわけで、薪ストーブは正規代理店で買った方がトータルでメリットがあると思います。

 余談ですが、外国製のチェーンソーについても同じことが言えます。たとえばハスクバーナ(スウェーデン製)やスチール(ドイツ製)のチェーンソーは、日本製のチェーンソーよりも値段が高めのため、ついつい外国から直接購入しようと思ってしまいます。

 ですが、結論から言えば正規輸入モノの方が無難です。

 私自身、以前ハスクバーナのチェーンソーの並行モノを使用していたことがあります。新品が本当に安く売られているのですが、

  • 細部で国内正規モノと随所で部品が違っていた(例えば排ガス規制が各国によって異なるため、輸出国別に細かい部分で仕様が異なる)
  • 並行モノ販売業者は部品供給をしなかった、
  • 国内正規代理店は修理を一切受け付けなかった、

という理由で修理ができず、現在は使っておりません。

現在は正規代理店から購入したものを使っています。

 以上、どのような選択をされるにせよ、ご自身のライフスタイルに合った選択をして薪ストーブライフをお楽しみください。



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