薪作りのための熱中症対策
薪作りのための熱中症対策
薪作りは屋外で行う全身運動です。特に梅雨明けは暑さがきびしくなります。
そこでこのページでは、「熱中症」とその対策について説明させていただきます。
熱中症とは
熱中症とは、
暑い環境下で運動や作業でちょっと気分が悪いと思っているうちに急激に進行して死に至る急性疾患
とされています。
真夏の炎天下で運動や草刈り、薪割り、チェーンソー作業等をして、汗びっしょりになるのは良いとして、たちくらみやふらつき、悪寒(おかん)、を感じたことがあるかもしれません。
これが『熱中症』と呼ばれるものです。
ちなみに、同じような症状として、「熱痙攣(ねつけいれん)」「熱失神(ねつしっしん)」「熱疲弊(ねつひへい)」「熱疲労(ねつひろう)」「熱虚脱(ねつきょだつ)」「熱浮腫(ねつふしゅ)」「熱射病(ねっしゃびょう)」「日射病(にっしゃびょう)」等をお聞きになったことがあるかもしれません。
これら用語は医学書でも混乱があったようで、現在はすべて『熱中症』という呼び方に統一されています。
人の体は、体温を摂氏36度程度に一定に保つ機能があるわけですが、高い外気温で運動することにより体に熱がたまり体温上昇し、身体障害を起こすというわけです。
熱中症が発生しやすいとき
熱中症が起きやすいときは、例えば以下のような状況のときとされています:
・最も暑い時期の手前(梅雨あけ〜お盆前)
暑さに順応していない時期(気温32度〜 湿度65%〜)
・作業開始〜2日目
・午前10時〜12時 午後14〜16時
ポイントは、真夏の猛暑に熱中症になりやすいわけではない、ということ。
そうではなく、最も暑い時期になる手前で、体が暑さに順応していない時期ということです。
熱中症の症状
熱中症の症状は、I度(いちど)、II度(にど)、III度(さんど)というふうに3分類されています。
I度は軽く、II度は真ん中、III度は重いです。
- I度 めまい・失神(たちくらみ)、筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)、大量の発汗
- II度 頭痛・気分の不快・吐き気・倦怠感・虚脱感(体がぐったり)
- III度 意識障害・けいれん(呼びかけても反応がおかしい)、手足の運動麻痺(体がガクガクと引きつける、真っ直ぐに歩けない)、高体温(体に触れると熱い)
気温だけではわからない!
ところで、熱中症になりやすい環境は、一般の天気予報の「気温」とは必ずしも一致しません。
一つには、そもそも、天気予報で言われる「気温」とは、緑の芝生の上に建てられた百葉箱(ひゃくようばこ)の中の気温で、風速5m/秒の風を吹かせて計測された数値です。百葉箱の中は、アスファルトとコンクリートに囲まれた市街地に住むよりもずっと過ごしやすい場所といえます。
アスファルトの照り返しがあり建物で風通しが良くない市街地では更に5度位高い気温になっているとされています。これが一点。
二点目としては、体温を上げる要因としては、気温だけではなく、
湿度(しつど) と 輻射熱(遠赤外線) があります。
したがって、熱中症になりやすい(なりにくい)環境を知るには、気温(きおん)、湿度(しつど)、輻射熱(ふくしゃねつ)の3要素を総合して判断する必要があるというわけです。
WBGT 湿球黒球温度
熱中症対策としては、通常の天気予報の「気温」「湿度」だけではなく、
「輻射熱」を加えた「暑さ指数」で作業環境をみる必要があるわけですが、
そして、その指数を WBGT(湿球黒球温度)と呼びます。
WBGT(湿球黒球温度)の算出方法は以下の通りです:
屋外(直射日光がある)
WBGT=0.7(湿球温度)+0.2(黒球温度)+0.1(乾球温度)
湿球温度が7割、黒球温度が2割、乾球温度が1割。
つまり、気温(乾球温度)はたった1割しか考慮されません。
屋内(直射日光がない)
WBGT=0.7(湿球温度)+0.3(黒球温度)
直射日光があたらない屋内においては、湿球温度7割、黒球温度3割と、気温は全く考慮されません。
WBGTは専用機器がないと測れませんので、目安として気温との関係を示したものが以下となります。(あくまでも目安です)
気温(目安) WBGT
35度〜 31度〜 運動は原則禁止
31〜35 28〜31 厳重警戒
28〜31 25〜28 警戒
24〜28 21〜25 注意
〜24度 〜21度 ほぼ安全
実際には、これら3つの温度を測って計算で求めるのではなく、デジタル表示で簡単に測れる測定器が存在しますので、通常はこの器械を使用します。
どのようなものなのかは、「WBGT」と検索すると画像が出てきます。
作業内容とWBGTとの関係
0 安静 WBGT 32度
(安静)
1 低代謝率 WBGT 29度
(軽い手作業、パソコン作業等)
2 中代謝率 WBGT 26度
(トラックのオフロード操作、、草むしり)
※四輪駆動車でのオフロード走行はこれに該当すると思われます
3 高代謝率 WBGT 22度(気流を感じない時)
(重いものを運ぶ、草刈り、のこぎり引き、早めに歩く)
4 極高代謝率 WBGT 18度(気流を感じない時)
(オノを振るう、階段を登る、走る)
※チェーンソー操作、薪割りはこれに該当すると思われます
たとえば、
- 家の中で横になって昼寝をしているときは、WBGT 32度まではOK。
- 庭の草むしりをするのは、WBGT 26度まではOK。
- 薪割りをするのは、WBGT 18度まではOK。
という意味です。
オノを振るう作業というのは、かなり気をつけないといけない作業というわけです。
※
オノでの薪割りは、慣れてくれば体力はあまり要らなくなるのですが、それでも炎天下では外にいるだけで体が堪えますので、相当気をつける必要があります。
強制飲水
暑い中での作業は極力避けることが基本ですが、
とはいえ薪ストーブ愛好家にとってはお盆前に薪作りを終っていないと年を越せません。
熱中症にならないためには、水分補給が絶対必要となります。
その際に気をつけなければならないのは、「飲まなくても大丈夫」は危険であるということです。
「のどが渇いたな」と思ったときは遅すぎで、既に体は脱水し始めており、心拍数は上昇しはじめ、作業能力は低下しています。
そこで。
渇きを覚える前に飲む。
これを『強制飲水』(きょうせいいんすい)といいます。
30分毎に1回、150〜200mlを飲む。
私の経験からしますと、チェーンソー作業や薪割り作業は、500mlのペットボトルで作業前に半分飲み、以降は30分毎に半分飲む、というスパンがちょうど良いようです。
作業前 250ml飲む 500mlペットボトル半分飲む
30分後 250ml飲む 1本あく
60分後 250ml飲む 2本目を半分飲む
90分後 250ml飲む 2本目があく
120分後 250ml飲む 3本目を半分飲む ここまで合計1.25リットル
※
個人差がありますので適宜調整してください。
これ以上飲む場合もあります。その場合は、極めて過酷な状況であることを自覚して、休憩するなり作業をやめるなりして調整します。
自分の体の調子を自分で知る、自分の体と対話する、のが大事かと思います。
何を飲むか
飲み物は、基本的には水(みず)ですが、水のままですと吸収が遅いため、以下のものがお勧めです。
水+塩分濃度0.1%〜0.2%+糖分濃度3〜5%
電解質(ナトリウムイオン)と糖質とがあると腸管での水分吸収がスピードアップします。
以下、留意事項です:
- コーヒー、アルコールは利尿作用があるので、飲んだら余分に水分補給する必要があります。
- 炭酸飲料、甘すぎるもの、カロリーゼロ飲料はお勧めでない
私じしんは、ポカリスエット(粉末)を水に溶かしたものと、水の2種類を用意して飲んでいます。(量としてはポカリスエットの方が多いが、口直しに水を飲む感じ)
水だけだとお腹がポタポタします。水だけでは吸収が遅く、激しい発汗時には吸収が追いつきません。